懲戒権濫用法理
労働契約法15条は、「使用者が労働者を懲戒することができる場合において、当該懲戒が、当該懲戒に係る労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したしたものとして、当該懲戒は、無効とする。」と定められています。
不遡及・一事不再理の原則
就業規則などに新たに懲戒規定を設けても、当該規定を周知する以前の非違行為に適用されない原則を不遡及原則といいます。また、過去に懲戒処分の対象になった行為を重ねて懲戒することはできない原則を一事不再理の原則といいます。
相当性の原則
懲戒処分は、労働者の非違行為の内容・程度に照らして不均衡なものであってはならないという原則をいいます。
適正手続きの原則
就業規則や労働協約に、懲戒委員会等への諮問手続、弁解の機会付与手続、労働組合との事前協議等の手続きが定められている場合には、定められた手続きを経ない懲戒処分は原則として無効ないし懲戒権の濫用になるとする原則をいいます。
自宅待機
懲戒処分に関する調査のために労働者に自宅待機を命ずることは、不当な目的や不当に長期になされたものでない限り、原則として有効ですが、使用者は賃金支払い義務を免れないと解されています。
懲戒処分の公表
懲戒処分の公表は、当該公表行為が具体的状況のもと、社会的に見て相当と認められる場合でなければ、違法と判断される可能性があります。
職場外の非行
判例(最判昭和49年2月28日民集28巻1号66頁・国鉄中国支社事件)は、労働者の職場外の非違行為であっても、企業秩序に直接関連するもの、企業の社会的評価を棄損する恐れのあすものについては、広く企業秩序の維持確保のために、懲戒処分の対象となると考えています。