業務起因性
業務と傷害との間に一定の因果関係(単なる条件関係ではなく、相当因果関係にあること)がある場合にのみ業務上の負傷等を認定する労災実務における行政解釈上の概念です。例えば、休憩時間中にキャッチボールをしていて球が当たってケガをした場合などは原則として業務起因性がないと判断されます。
業務上の疾病
災害が原因で発症する災害性の疾病と、長期間にわたり業務に伴う有害因子にさらされることにより発病する非災害性の疾病があると言われています。後者の業務起因性を立証することは困難を伴いますが、労働基準法施行規則別表1の2に医学的経験上一般的に認められる疾病の類型が業務上の疾病として例示列挙されています。
通勤災害
労働者の通勤による負傷、疾病、傷害又は死亡をいいますが、①住居と就業場所との間の往復、②就業場所から他の就業場所への移動、③単身赴任先から家族のいる帰省先との間の往復などが通勤災害として認められます。合理的な経路からの逸脱があった場合は、通勤と認められない場合があります。
安全配慮義務
用者は労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう必要な配慮をする義務を負っています(労働契約法5条)。労働災害が発生した場合、労働者は安全配慮義務違反を根拠に、使用者に対して民事損害賠償を求めることがあります。安全配慮義務の範囲は広く、裁判例上、高所で作業するための転落防止設備を設置する義務、機械の操作方法の教育指導義務、長時間労働により健康を害さないよう配慮すべき義務など事案に応じて様々な義務が認定されています。
不法行為
労災事故が発生した場合、安全配慮義務と合わせて、各種不法行為責任、例えば使用者責任(民法715条)、土地の工作物責任(民法717条)、自動車の運行供用者責任(自動車損害賠償保障法3条)などによる責任追及がされることもあるので、使用者側としては注意が必要です。
過失相殺
被害者に過失があれば、損害の公平な分担を図るため、被害者側の過失を斟酌して損害額を定める制度。民法418条、722条2項に規定されており、労災事故による損害賠償請求においても、多くのケースで労働者側の過失を認め過失相殺がなされています。
寄与度減額
被害者側に、損害拡大等に寄与した点がある場合には、民法722条2項を類推適用して損害額を減額する法解釈。業務上の疾病及び死亡などの労災事故においても、労働者側の基礎疾患が寄与度減額の対象となることは裁判上認められています。
損益相殺
労災事故で、労働者が会社に対して民事損害賠償を求めてきても、既に給付された労災保険給付は損益相殺の対象として控除することができます。ただし、遺族年金や障害補償年金などの将来給付に関しては、前払一時金の最高限度額相当額の現価の範囲で、支払猶予を主張することができます。